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Column

快適空間コラム

顧客の声を清掃仕様の改善に活かす|データ分析で空間品質を維持・向上させる方法

【連載】清掃会社のDXを考える #5

清掃仕様が、最初に決めたままになっていませんか?契約時に作成した清掃仕様書。どこを・どの頻度で・どの方法で清掃するかを決めた書類が、そのまま何年も使われているケースは珍しくありません。
 
しかし現場は変わります。利用者の数も、動線も、汚れ方も。それなのに仕様だけが変わらない。その現場とのズレが、清掃の品質を下げることにつながります。
 
現場の変化を、誰より早く感知しているのはお客さまや施設の利用者です。「ここが汚れやすい」「この時間帯が気になる」という声こそが、清掃仕様を変えるための最もリアルなデータです。
 
本記事では、顧客の声(VOC)をデジタルで集め、清掃仕様の改善サイクルに変えるDXの考え方と実践についてお伝えします。

清掃仕様は「決めたら終わり」ではない|変化し続ける現場の実態

清掃の現場を預かるなかで、私たちはいつも大きな矛盾に直面しています。それは、「現場は生き物のように毎日変化しているのに、契約書類に書かれた清掃仕様だけが何年も硬直化したまま固定されている」という事実です。

「清掃仕様は、固定された完成品ではなく、変化に合わせてアップデートし続ける前提で設計する必要があります」

最初に決めたルールをただなぞるだけの清掃は、一見すると「契約通りの誠実な仕事」に見えるかもしれません。しかし、現場の利用実態から乖離した仕様をいくら真面目に実行しても、本当の意味で施設が快適に保たれることはないのです。まずは、清掃仕様の本来の役割と、現場で起きる変化の本質を整理してみましょう。

清掃仕様とは何か——現場運用の設計図

清掃仕様書とは、平たく言えば「どのエリアを、週に何回(あるいは1日に何回)、どのような手順と資機材を使って清掃するか」を細かく定めた現場運用の設計図です。これは発注側(ビル管理会社やオーナー、テナント)と受注側(清掃会社)の間で結ばれる契約の根幹であり、お互いの評価基準となる重要な書類です。

しかし、多くの現場において、この仕様書は「清掃会社と最初に契約を結んだとき」に作成されたきり、キャビネットの奥深くに眠ったままになっています。何年も前の前提で作られた設計図をベースに、今日の清掃が行われているケースが非常に多いのが業界の現状です。

清掃現場で必ず起こる「4つの変化」

現場が稼働している限り、以下の4つの変化が必ず、かつ絶え間なく発生します。

情報が更新されていない清掃仕様と比較すると、次のようなズレが生じます。

変化の要因具体的な現場の実態固定された仕様との「ズレ」
利用状況の変化ビルの入居率向上、オフィスの出社率変動、曜日・時間帯による繁閑の差想定以上の利用集中による、トイレットペーパー切れやゴミ箱の溢れ
人の動線の変化オフィスのレイアウト変更、ロビーへのカフェ改設、通路閉鎖など人が集まる場所が移動し、仕様外の特定スポットに汚れが集中する
汚れ方の変化梅雨の泥、冬の埃、テナント業種(飲食店やショールーム)の入れ替え油汚れや足元の擦れ跡など、画一的な日常清掃では落とせない汚れの蓄積
テナント・設備の変化テナントの交代、フロアの大規模改修、給湯室や喫煙所の増設・撤去仕様書に記載された物理的な範囲や清掃構造そのものが合わなくなる

仕様を変えないことで起きる「品質の停滞」

現場が変化しているのに仕様を固定したままだと、深刻な「品質の停滞」が起こります。

よくあるのは、「スタッフは仕様通り完璧に作業しているのに、利用者から不満が出る」という現象です。現場スタッフも「本当は別の場所をやるべきだ」とズレを感じていますが、ルールに縛られて個人の判断では動かせません。

結果として、日々の業務を遂行しているにもかかわらず、空間の品質がじわじわと下がり、顧客満足度が低下する悪循環に陥ります。清掃仕様を固定したままにすることは、空間の品質の進化を止めてしまうことと同義なのです。

 顧客の声は、現場に最も近い「データ」である

変化する現場に仕様を合わせるための重要な材料が、「顧客の声(VOC)」です。これまでは対応に追われる「クレーム」として扱われがちでしたが、本来は現場の状況を正確に映し出す「リアルなデータ」にほかなりません。

お客さまの声が持つ情報価値

「照明の球切れ」「不審な放置ゴミ」「トイレの備品不足」といった声は、施設を日常的に使う利用者が体感した事実です。清掃スタッフの巡回時間には限りがありますが、毎日空間を使い続ける利用者は現場の変化を誰よりも早く感知しています。これらの声は、清掃仕様のどこを見直すべきかを教えてくれる客観的な指標となります。

これまでの清掃業界での「声の扱われ方」

これまでの清掃現場では、日々寄せられる顧客の声を組織的に蓄積・活用する仕組みの構築が難しく、以下のように現場ごとの個別対応に留まりやすい側面がありました。

従来の扱われ方具体的な実態発生する問題
点の対応で終わる口頭で伝えられ、その場の拭き掃除やゴミ回収で終了一時的な「その場限りの対応」で消費される
仕様に繋がらない記録日報に書くだけで、月が変われば忘れ去られる仕様書(頻度や人員配置)の見直しに反映されない
断片的な個人の記憶「あの場所は汚れやすい」等の情報が担当者個人に留まる組織として蓄積・共有されない

顧客の声は、現場ごとの個別対応にとどまり、仕様を最適化する仕組みには至っていませんでした。しかし、日々寄せられる利用者の声は、一時的に処理すべき事案ではなく、仕様を現場の実態に合わせるための貴重な「現場データ」となります。

清掃DX化対応で変わる「声の扱い方」|収集から仕様改善までのサイクル

清掃DXにおける顧客対応の本質は、寄せられた声を単なる「トラブル処理」で終わらせず、清掃仕様を最適化するための「データ」へと変えることにあります。

デジタルを活用して声を仕組み的に蓄積し、客観的な根拠に基づいて清掃計画を定期的にアップデートする循環をつくること。これこそが、変化する現場に合わせた確かな品質維持を実現するための顧客の声を活かすDXとなります。

「クレーム対応型」から「仕様改善型」へ

顧客の声を活かすDXでは、寄せられた声にその都度対処する従来の「クレーム対応型」から、蓄積したデータに基づいて仕様(頻度や手順)そのものを見直す「仕様改善型」への転換を目指します。

問題が起きてから動く「後手の対応」から、仕組みで発生を防ぐ「先手の管理」への違いを整理すると、以下のようになります。

観点クレーム対応型(従来)仕様改善型(DX後)
声の扱い方その場で対応して終わりデータとして蓄積・分析する
改善の根拠担当者の感覚・記憶傾向データに基づく判断
仕様の変化ほぼ変わらない定期的にアップデートされる
問題の発生同じ問題が繰り返される起きない仕組みに変わる

仕組みで声を集める——EZポストの活用

このサイクルを低負荷で実現するために、リ・プロダクツが開発したのがQRコード型VOCシステム「EZポスト」です。

施設のトイレやゴミ庫などの指定場所に専用QRコードを設置。利用者はスマートフォンでスキャンするだけで、快適性や要望、球切れなどの気づきをその場で送信できます。アプリ不要のため投稿のハードルが低いのが特徴です。

送信されたデータはリアルタイムに自動集計され、レポートとして管理画面に一元化されます 現場の“感覚”ではなく、利用者のリアルな声を吸い上げるインフラがQRコード1枚で完成します。

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集まった声を清掃仕様に反映する——3つのステップ

集まったデータは、以下の3ステップで実際の清掃仕様書へと反映します。

■ STEP1|データを見る: 管理画面から、報告のあった場所・内容・頻度を客観的に確認します。

■ STEP2|傾向を読む: 「特定の日時にペーパー切れが頻発している」など、現在の仕様が実態に追いついていない傾向(パターン)を抽出します。

■ STEP3|仕様を変える: 傾向に基づき、該当時間の巡回頻度や作業手順を改訂し、現場スタッフへ展開します。

変更した仕様を確実に現場へ定着させる——EZクラウドによる一元管理

データ根拠に基づいて清掃仕様(手順や頻度)を改訂しても、それが現場スタッフに共有され、日々の作業として確実に実行されなければ品質の維持はできません。

この「仕様変更後の確実な運用」を支える基盤となるのが、維持管理一括クラウドシステム「EZクラウド」です。

EZクラウドは、日常清掃から定期清掃、法定点検にいたるまでの「計画・実施・報告」をデジタルで一元管理するプラットフォームです。修正された新しい清掃スケジュールや作業指示をリアルタイムに現場へ展開し、その実施状況を透明性高く可視化します。

顧客の声(VOC)を起点に生まれた改善策を「変えて終わり」にせず、組織的な運用体制として現場に定着させることで、初めて持続的な空間品質の向上が実現します。

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清掃会社は「作業」から「設計」へ|役割変容の先にある可能性

顧客の声(VOC)を基に仕様を最適化できる体制を整えることで、清掃会社は「決められた作業をこなす会社」から、データに基づいて空間価値をデザインする「仕様の設計者」へと役割を変容させます。この変容の先には、価格競争からの完全な脱却と、顧客との持続的なパートナー関係の構築という可能性が広がっています。

顧客の声(VOC)が変える清掃会社の役割

役割の変容にともない、清掃会社の立場や、施設に関わる関係者(ビル管理会社、店舗・テナント、施設オーナー)との関係性は以下のように変化します。

観点これまでこれから
清掃会社の立場仕様書に書かれた「作業の実行者」データを基に空間価値を高める「仕様の設計者」
改善の起点クレームが来てから動く「後手の対応」蓄積された声のデータをもとに先手を打つ「先手の管理」
顧客との関係「言われた通りにやってもらう」下請け関係データ根拠を基に未来を「一緒に考える」パートナー関係
会社の価値作業員の労働力や、平米単価の安さ現場を分析する設計力、課題の提案力、データの活用価値

 VOCがあるからこそ、掃除ロボットの配置根拠が生まれる

仕様設計者としての真価が最も具体化するのが、掃除ロボットを現場に配置する局面です。単に広いエリアを往復させるだけの「根拠なき配置」では、真の省人化や品質向上には寄与しません。

「この場所、この時間帯に美観維持を求める利用者の声(データ)が集中している」という明確な事実があるからこそ、どこにロボットを投入すべきかという客観的な「配置根拠」が生まれます。定性的な声のデータとロボットの稼働データを掛け合わせることで、人とロボットを適切に組み合わせた清掃仕様の最適化が完成します。

👉 連載#3「現場と掃除ロボットの最適なハイブリッド配置」の記事はこちら

 DXの本当のゴールは「快適空間」をつくること  

業務の効率化やロボット導入によるコスト削減は、すべてDXの「手段」にすぎません。清掃DXが目指すべき最終的なゴールは、施設を利用するすべての人へ「快適な空間」を安定して提供し続けることです。

利用者の声を仕組みで集め、現場の変化を逃さずに清掃仕様を変え続けること。このデータ活用と運用の循環を維持することで、利用客の満足度向上や、建物の施設・資産価値の維持向上が実現します。「変化し続ける現場に、データに基づいて常に最適な答えを出し続ける」ことこそが、私たちが目指す顧客の声を活用した清掃DXの本質です。

清掃DX化対応でよくある質問(FAQ)

Q. VOCの収集システム(EZポスト)は、どんな規模の施設でも使えますか?

A. はい。EZポストはビル・商業施設・マンション共用部など、利用者が日常的に使う施設で活用できます。QRコードを設置するだけなので、管理会社・施設オーナー・店舗・テナントいずれの立場でもご利用いただけます。

Q. 清掃仕様の改善を、ビル管理会社やオーナーへの提案に活用できますか?

A. 可能です。EZポストで集まった利用者の声とデータは、「特定のエリアに月○件の要望がある」という具体的なエビデンス(証拠)となります。ビル管理会社にとってはオーナーへの改善提案の根拠となり 、店舗・テナントにとってはサービス品質の継続的な改善判断に直結します。

Q. VOCのデータは、掃除ロボットの活用にどのように使えますか?

A. 顧客の声から「このエリアは毎日きれいにしたい」「ここは汚れやすい」という傾向が見えてきます。そのデータを根拠に、どこにロボットを配置するかを判断できます。感覚ではなくデータでロボットの活用場所を決めることで、清掃品質の安定と効率化が同時に実現できます。

まとめ|清掃DX化対応の本質は、顧客の声を仕様改善の循環に変えること

清掃DX化対応の本質は、日々の利用状況や動線の変化に応じて、清掃仕様(手順や頻度)を柔軟に最適化し続ける仕組みの構築にあります。どれほど最新の機材や人員を揃えても、固定された仕様のままでは現場の実態との間に必ず乖離が生じるためです。

本記事の実務的な要点は以下の5点に集約されます。

1️⃣固定仕様から柔軟なアップデートへの転換: 現場の変化を前提とし、当初の仕様を定期的に見直し・更新する体制が不可欠です。

2️⃣ 顧客の声を「現場データ」として再定義: 寄せられる不満や要望は単なるトラブル処理の事案ではなく、仕様を見直すための貴重な一次データとなります。

3️⃣仕組みによるデータの自動収集と可視化: QRコードを活用した「EZポスト」などのインフラにより、声を組織的に自動収集・分析する環境を整えます。

4️⃣データ根拠に基づく仕様の改訂: 抽出された課題の傾向から、人員配置や掃除ロボットの稼働スケジュールを客観的な根拠に基づいて修正します。

5️⃣作業の実行者から仕様の設計者への進化: 指示通りの作業をこなす下請け関係から脱却し、データを駆使して空間の品質を能動的にデザインするパートナーへと移行します。

顧客の声を清掃仕様の改善サイクルへ組み込み、そのデータ運用によって「快適な空間」を安定して提供し続けること。これこそが、価格競争を跳ね返し、施設オーナーや店舗・テナントに対して持続的な施設価値・資産価値の向上をもたらす清掃DXのゴールとなります。

お問い合わせのご案内

リ・プロダクツ株式会社では、施設維持管理一括クラウドシステム『EZクラウド』や、施設利用者の声を即座に集計して改善に繋げるQRコード型VOCシステム『EZポスト』のご提供を通じて、清掃会社さま、ビル管理会社さまのDX対応を全面的に支援しています。

「自社の現場に合わせた清掃仕様の見直しを行いたい」「データ根拠のある提案型営業へとシフトしたい」など、現在の課題や目的に応じて以下よりお気軽にご相談ください。

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この記事の執筆者

代表取締役 髙奥 要輔

清掃業界30年以上のキャリアを持つ。現場作業から店舗立ち上げ支援、清掃指導、ITシステム開発まで幅広い経験を持つ。