清掃DXの意義は、効率化や省人化だけにあるわけではありません。その本質は、清掃会社が「何に価値を置くか」を見直すことにあります。人手は増えず、コストは上がり続ける。この状況を人員増や値下げで乗り切るには限界があります。
本記事では、清掃業界の課題を整理し、リ・プロダクツの清掃DX事例を紹介したうえで、清掃会社が「快適空間を設計する会社」へと変わっていく道筋を紹介します。
清掃業界が直面している現実——数字で見る3つの課題
清掃会社のDXを考えるうえで、まず押さえておきたいのが業界の現実です。現場が直面している現状を、客観的な数字で正確に捉えることで、課題が浮き彫りになります。現在の清掃業界は、主に3つの構造的課題を抱えています。
清掃業界の課題1️⃣|人手不足と労働人口の減少
最大の課題は、人手不足です。労働人口が減少を続けるなか、清掃の現場では採用が年々難しくなっています。
さらに高齢化も深刻です。
リ・プロダクツのデータでは、従業員に占める60〜70代の比率は、10年前の48%以上から現在は59%以上へと上昇しています。

※数値は2024年11月時点のデータであり、現在はさらに上昇しています。
清掃業界の課題2️⃣|コストの上昇
二つ目は、コストの上昇です。この5年間で清掃現場における人件費は15%以上増加し 、社会保険などを含む法定福利費は、全体で83%以上も上昇しているという背景があります。
また、清掃資機材・ケミカルは7〜20%以上増加し、交通費や制服代も上がり、コスト構造そのものが根本から変わりました。
清掃業界の課題3️⃣|下請け構造のなかで、価値が伝わりにくい
三つ目は、清掃会社の価値が顧客に伝わりにくいことです。清掃会社の価値は、同じ広さ・同じ時間でも、どこをどう清掃するかの判断と工夫によって、空間の清潔さや快適さの仕上がりが変わるという「結果の差」にあります。
一方で、清掃業界の多くは管理会社の下請けとして清掃を担う構造のなかにあり、清掃費は管理会社にとって削減対象になります。そのため仕上がりの差より値段が優先され、質や工夫は価格の比較に埋もれてしまいます。
この「価値が伝わらない構造」をどう抜け出すかが論点になります。
▶ この3つの課題に正面から向き合う方法が、DXです。

清掃会社は「作業の会社」だった——DXが変える役割と価値
清掃DXを進めると、清掃会社の「役割」そのものが変わります。ここでいう役割変容とは、清掃会社が提供する価値の中心が、作業の実行から品質の設計へと移っていく構造の変化のことです。

清掃会社は「作業の会社」だった
これまで清掃会社の価値は、決められたことを・決められた通りに・ミスなくこなすことにありました。与えられた仕様に確実に応える「作業の提供」が、清掃会社に求められてきた役割です。作業の価値は現在も変わらず欠かせません。一方で、作業だけに価値を置く状態のままでよいのかという問いが、業界には生まれています。
清掃DXが進むと何が変わるのか
清掃DXが進むと、現場では具体的な変化が起こります。
✅️管理がデータになる → 現場の状態が可視化される
✅️作業が標準化される → 品質が均一に保たれる
✅️顧客の声が蓄積される → 改善の根拠が手に入る
これらが揃うと、清掃会社は「説明できる会社」へ変わります。なぜこの仕様なのか、なぜこのコストなのか、なぜこの結果なのかという問いにデータという根拠を持って答えられるようになります。
清掃会社は「価値にコミットする会社」へ
DXを進めることで、清掃会社の役割は段階的に変わります。決められた作業をこなす会社から、データと顧客の声をもとに清掃仕様を設計し、空間の価値にコミットする会社へ。この進化は、3つの段階で整理できます。
清掃会社の役割が変わる3つの段階
| 段階 | 役割 | できること |
|---|---|---|
| ①作業の会社 | 決められた通りにこなす | 仕様通りに実行する |
| ②価値にコミットする会社 | なぜかを説明できる | 根拠を持って改善を提案する |
| ③快適空間を設計する会社 | データと声で仕様を設計する | 空間の価値を継続的に高める |
清掃会社が持つ3つの武器
業界の課題に向き合うとき、清掃会社には規模の大小を問わず活かせる武器があります。むしろ、現場に近い会社ほど強みを発揮できるのです。
1️⃣現場との距離感:経営者や責任者が直接現場を知っているため、汚れ方や利用状況の変化にすぐ気づけます。判断に時間がかからず、その場で改善を決められます。
2️⃣仕様設計の小回り:顧客から「ここをこうしてほしい」と声が上がったとき、決裁や階層を経ずに清掃仕様へ反映できます。改善のスピードが、そのまま満足度の差になります。
3️⃣DX実践力:経営者自らがツールを試し、現場で検証できます。大がかりな計画を待たず、小さく始めて試行錯誤を重ねられることが、DXを定着させる力になります。
清掃の価値は、「現場をどれだけ理解し、どれだけ仕様へ反映できるか」で決まります。これらの武器を磨くことが、選ばれる清掃会社への近道です。
DXで変わる清掃の方法——リ・プロダクツの実践事例

ここからは、清掃DX事例として、リ・プロダクツが実際に取り組んできたDXを紹介します。
管理・現場・営業・顧客の声という4つの領域でのDXが、どのように清掃の方法を変えてきたのか。連載①〜⑤で扱ってきた取り組みを整理しました。
1️⃣管理のDX——見えないコストを削減する
一つ目は、管理のDXです。作業報告・シフト・請求書管理をクラウド化し、管理業務を効率化することで、これまで見えにくかったコストを削減します。
リ・プロダクツでは、自社開発のクラウドシステム「EZクラウド」でバックオフィス業務をデジタル化し、古い慣例の排除やリモートワークなど働き方の変化にもつなげています。
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2️⃣現場のDX——掃除ロボットの継続導入
二つ目が、現場のDXです。現場DXの中心が、掃除ロボットの活用にあります。リ・プロダクツは2018年から継続的に掃除ロボットを導入・運用してきました。
マキタ、ソフトバンクロボティクス、ケルヒャーなど複数メーカーの機種を実際に検証し、導入効果を発揮しています。
3️⃣営業のDX——Webで新たな顧客をつくる
三つ目が、営業のDXです。Webサイトのリニューアル、SEO対策、CRM導入を進めた結果、Webアクセス数は2022年の16,064から2024年には69,403へと、3年で約4.3倍に伸びました。
問い合わせ・資料ダウンロード数も207件から386件へ、約186%増となっています。情報発信を仕組み化することで、清掃会社は新たな顧客と出会う入口を持てます。
④VOCのDX——顧客の声を仕様改善につなげる
四つ目が、VOCのDXです。VOCとは、顧客の声(Voice of Customer)のことです。
リ・プロダクツは、自社開発のQRコード型VOCシステム「EZポスト」で顧客の声をデジタルに収集しています。
建物の利用者がスマートフォンでQRコードを読み取り、快適性や要望を送信。集まった声は自動で集計・可視化され、清掃仕様の改善サイクルに組み込まれます。
これにより、「クレーム対応型」から「仕様改善型」への転換が実現します。
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清掃仕様の設計が、これからのビジネスの核心になる
清掃DXが向かう先にあるのが、清掃仕様の設計です。清掃仕様とは、どこを・どの頻度で・どの手順で・誰が(または何が)清掃するかを定めた、清掃の設計図のことです。
清掃仕様の設計事例を起点に、これからの清掃ビジネスの核心を整理します。
清掃仕様を構成する5つの要素
清掃仕様は、主に5つの要素で構成されます。それぞれがDXと結びつくことで、根拠を持った設計が可能になります。
| 要素 | 内容 | DXとの関係 |
|---|---|---|
| 日常清掃の頻度 | 毎日の清掃エリア・回数・手順 | VOCデータで最適化 |
| 定期清掃の頻度 | 月次・季節ごとの特別清掃 | 実績データで見直し |
| 掃除ロボットの活用 | どこに・どの機種を・どの時間帯に | VOCで配置根拠を得る |
| 人の配置 | 人でしかできない作業への集中 | ロボットとの役割分担 |
| 顧客の声の反映 | EZポストで収集したデータの反映 | 仕様の継続的更新 |
「設計の循環」こそがDXのゴール
清掃仕様に「完成」はありません。仕様を設計する → 実行する → データと顧客の声を蓄積する → 仕様を更新する。この「設計の循環」を回し続けることが、清掃品質を継続的に高めます。
設計の循環とは、清掃仕様を固定せず、現場データと顧客の声をもとに更新し続ける仕組みのことです。

この設計の発想は、サービスそのものにも結実します。リ・プロダクツの環境配慮型フロアコーティング「Reエコ・コート」は、床の美観と耐久性を高めることで、掃除ロボットの活用や定期清掃のコスト最適化につながる設計を実現しています。
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ロボットもAIも「手段」にすぎない
清掃仕様の設計を語るうえで、掃除ロボットやAIの位置づけを明確にしておく必要があります。掃除ロボットは、作業を担うための手段であり、掃除機の代わりになる存在です。
AIは、判断を補助するための手段です。価値が生まれるのは、これらを清掃仕様のなかで適切に配置し、組み合わせて使うことで、お客様の必要とする快適空間を創れたときです。
清掃業界の課題とDXに関するよくある質問(FAQ)
Q. 清掃会社がDXに取り組む意味は何ですか?
A. 経営者が直接動けること、現場との距離が近いこと、小回りが利くことが武器になります。リ・プロダクツでは掃除ロボット継続導入・Webアクセス4.3倍・VOCシステム開発という実績がその証拠です。
Q. 清掃会社を選ぶ際に、何を基準にすればよいですか?
A. 価格だけでなく、「清掃仕様を設計・改善できる会社かどうか」が重要な基準になります。顧客の声を仕組みで収集し、データをもとに仕様を見直せる会社は、長期的な品質向上と空間価値の維持につながります。
Q. 清掃DXはどこから始めればよいですか?
A. まず「管理のDX」からがおすすめです。日報・シフト・請求書のクラウド化は即効性が高く、効果を実感しやすいです。次に情報発信(営業DX)、その後に掃除ロボット導入・VOCシステムという順番が進めやすいでしょう。
まとめ|清掃会社のDXが向かう先「快適空間をクリエイティブする会社」へ

清掃会社のDXが向かう先は、「快適空間をクリエイティブする会社」です。快適空間をクリエイティブするとは、空間をきれいにすることにとどまらず、利用者が気持ちよく過ごせる状態・働く人の負担が減る状態・建物の価値が保たれる状態を、意図的に設計して実現することです。
本記事の実務的な要点は、以下の4点に集約されます。
1️⃣業界課題は数字で直視する:人手不足・高齢化(60〜70代が48%→59%)・コスト上昇(最低賃金5年で83%増)が同時に進んでいる
2️⃣DXは「役割」を変える手段:作業をこなす会社から、データと顧客の声で清掃仕様を設計する会社へ進化する
3️⃣DX事例は規模を問わず実践できる:管理のクラウド化・掃除ロボットの継続導入・Web集客・VOC活用は、規模を問わず段階的に始められる
4️⃣清掃コストは空間価値への投資と捉え直す:仕様を設計・更新し続けることで、コストは経費より価値創出の原資になる
最後に——清掃DXは実践した会社から変わっていく
清掃業界は、まだ変われます。管理を見える化する、情報を発信する、顧客の声を集める、小さな範囲から掃除ロボットを導入する。その一つひとつの積み重ねが、やがて大きな変化になります。
清掃DXとは、「何に価値を見出すか」を問い直し、実行し続けることです。清掃する会社から、快適空間を設計する会社へ。価値を変えた清掃会社は、選ばれ続けます。
■ お問い合わせのご案内
リ・プロダクツ株式会社では、施設維持管理一括クラウドシステム『EZクラウド』や、施設利用者の声を即座に集計して改善につなげるQRコード型VOCシステム『EZポスト』の提供を通じて、清掃会社さま・ビル管理会社さまのDX対応を支援しています。
「自社の現場に合わせて清掃仕様を見直したい」「データ根拠のある提案型営業へシフトしたい」など、現在の課題や目的に応じてお気軽にご相談ください。
リ・プロダクツの取り組みの全体像は3分でわかるリ・プロダクツから
ご相談はお問い合わせフォームからご覧いただけます。
■【連載】清掃会社のDXを考える全6回
| 記事番号 | テーマ | リンク |
|---|---|---|
| #1 | なぜ清掃会社にDXが必要なのか | https://www.re-products.co.jp/column/a97/ |
| #2 | 管理のDXから始める——日報・シフト・請求のクラウド化 | https://www.re-products.co.jp/column/a102/ |
| #3 | 現場と掃除ロボット——DXで清掃の現場はどう変わるか | https://www.re-products.co.jp/column/a104/ |
| #4 | 清掃営業のDX——情報発信で選ばれる会社になる | https://www.re-products.co.jp/column/a105/ |
| #5 | 顧客の声を活かすDX——清掃仕様をアップデートし、空間の価値を高める | https://www.re-products.co.jp/column/a106/ |
| #6 | 清掃業界の課題とDX——「快適空間を設計する会社」へ | https://www.re-products.co.jp/column/a107/ |