飲食店のDXとは?導入するメリットや成功事例を紹介!

原材料価格の高騰や人手不足といった経営課題へ対応するため、DX(デジタルトランスフォーメーション)を導入する飲食店が増えています。
とはいえ「何から手を付けていいかわからない」「費用対効果が不透明」と感じている飲食店経営者の方も多いのではないでしょうか。
本記事では飲食店でDXを導入による具体的なメリットや成功事例を5つ紹介します。また、導入時に直面しやすい課題とその解決方法、スムーズに導入するためのステップについても解説するので、ぜひ最後まで読んでください。
飲食店DXとは?
2024年3月に実施されたホットペッパーグルメ外食総研の調査によると、飲食店経営者が感じている経営課題の上位3つは「売上アップ」「食材費の削減・最適化」「人手不足」であることが明らかとなりました。
- 売上アップ:48.0%(前回:50.5%)
- 食材費の削減・最適化:31.9%(前回:28.7%)
- 人手不足:22.5%(前回:20.6%)
前回の調査に比べ、原材料価格の高騰が影響して「食材費の削減・最適化」の割合が特に増加しています。これらの課題の解決にはデジタル技術を取り入れて業務改善を図れるDXの導入が効果的です。調査によるとDXを導入している飲食店の割合は58.3%で、前回調査(57.7%)から微増しています。DX導入による効果の実感が高かったものは以下の通りです。
- 集客販促ツール × 売上アップ:56.4%
- セルフオーダー、スマホオーダー × 人手不足の解消:50.0%
同調査では飲食店の抱える経営課題を解決するためには、DXの導入が有効であることが判明しました。
飲食店がDXを急ぐ3つの理由
飲食店でDX導入を急げば現在抱えている人手不足の解消、原材料価格の高騰といった経営課題を解決することができ、さらに顧客体験の向上を見込めます。
人手不足の解消
厚生労働省の「令和6年版 労働経済の分析」によれば、飲食業を含む小売・サービス分野において、2023年時点で人手不足が深刻化しており特に中小企業においてその傾向が顕著となっています。
DXの推進によってPOSレジや勤怠管理ソフト、財務管理システムなどといったデジタルツールの導入することで効率よく業務を遂行でき、限られた人員でもサービスの質を落とさず店舗運営が可能となるため、人手不足の解消につながるでしょう。
原材料価格の高騰
食品産業は人口減少や高齢化や原材料価格の高騰などにより厳しい状況に直面しています。このような状況ではDXの導入が有効で、業務の効率化により人件費を削減することや対顧客のコア業務へ注力していくことで原価高騰への対応することができるでしょう。
顧客体験の高度化
POSレジの導入により販売データの自動蓄積し、さらに顧客の購買傾向を分析することで、パーソナライズされたサービスの提供が可能になります。また、モバイルオーダーやセルフレジの導入により、顧客の待ち時間を短縮できます。
成功事例5選
DX導入の成功事例を知れば、導入のイメージがより具体的になります。ここでは国内の飲食店での成功事例を5つ紹介します。
お掃除ロボットのレンタルサービスを導入(サトフードサービス)
サトフードサービスでは、業務用ロボット掃除機のレンタル事業を手がける株式会社リ・プロダクツの「おそうじレンタル」を和食さと全197店で導入しました。
「おそうじレンタル」
- ゴミの吸い取り、およびモップがけによる拭き掃除を場所に応じて使い分け
- 月額レンタル制(最低利用期間6ヶ月)で、スモールスタートが可能
- 椅子やテーブルなどの障害物に引っかからず清掃可能
- 専門担当者によるサポート+定期的な消耗品配送+故障交換対応 導入後の保証が手厚い
導入の目的
- 清潔感のある店づくりによる顧客満足度の向上
- 清掃の効率化と工数削減の両立人手不足への対応
導入の効果
- 1店舗あたり従業員2名が30分清掃→お掃除ロボットで夜間の自動清掃に切り替え
- 1日あたりの工数を0.5人削減し、他業務に回してサービスを強化
配膳ロボットの導入(すかいらーくホールディングス)
すかいらーくグループは、2021年11月ごろからネコ型配膳ロボット「BellaBot(ベラボット)」を全国の店舗に導入し、1年4ヶ月で全国2100店舗(ガスト、バーミヤン、ジョナサン、しゃぶ葉など)に3000台を導入しました。
ネコ型配膳ロボット「BellaBot」
- 最大40kgまでの料理を最大4箇所に配膳可能
- 音声案内や表情表示機能を搭載し、顧客とのコミュニケーションが可能
- 障害物を自動で回避し、安全に配膳
導入の目的
- 人手不足への対応
- 業務効率化と従業員の負担軽減
- 顧客満足度の向上
導入の効果
- ランチピーク時の回転率が改善
- 従業員の歩行数が削減され、業務負担が軽減
- 顧客アンケートで9割以上が「満足」と回答
業務改善アプリkintoneの導入(幸楽苑ホールディングス)
ラーメンチェーン店の幸楽苑は、1日に約30通届く問い合わせメールに対応するため、プログラミング無しでアプリを作れるkitone を導入しました。
業務アプリkintoneをカスタマイズし、メールワイズと連携
- 対応担当者は「メールワイズ」から返信し、その履歴を「kintone」で一元管理
- 一定期間未対応のメールには「kintone」からアラートを表示
- 店舗からの顧客の声も、従来のFAX報告から「kintone」への直接入力に変更
導入の目的
- 問い合わせメール対応業務の効率化、および負担軽減
- 顧客の声を効果的に取り入れて業務改善に活用
導入の効果
- 問い合わせのメールの9割を1日以内に返信可能となり、対応スピードが向上
- 対応履歴の一元管理により、対応もれや重複対応が削減
- メール返信のテンプレート化により1通あたりの対応時間が平均25分から10分に短縮
- 顧客の声の内容に注目し、経営改善へ活用
回転レーン上で寿司カバーの異常を検知・防止できる新AIカメラシステムの導入(くら寿司)
くら寿司株式会社は、2023年3月より、相次ぐ飲食店での迷惑行為を防止し、顧客の安心感を向上させるために新AIカメラシステムを導入しました。
新AIカメラシステム
- AIカメラを回転レーン上に設置し、寿司カバーの不審な開閉を検知
- 異常を検知すると、本部でアラートが鳴り、担当者が該当店舗の責任者へ連絡
- 該当する寿司皿を速やかに撤去し、顧客への確認を実施
- 「店舗遠隔支援システム」を活用して迷惑行為発生時の映像確認を警察への送付
導入の目的
- 回転寿司レーン上での迷惑行為(例:寿司カバーの不審な開閉)を防止し
- 回転寿司文化の存続と、安心・安全な飲食環境を提供
導入の効果
- 迷惑行為への迅速な対応が可能となり、顧客の安心感が向上
- 回転寿司レーンの衛生管理が強化され、店舗運営の信頼性が向上
- セルフサービス形式の飲食店への信頼回復に寄与
参考:くら寿司プレスリリース
セルフレジ、セルフオーダーシステムの導入(大阪王将)
大阪王将では約200店舗でセルフレジ、セルフオーダーシステムを導入しました。
ALL POSシステム(セルフレジ+セルフオーダーシステム)
- お客様自身でオーダー、決済ができるフルセルフレジ
- タブレットやスマートフォンといった使い慣れたデバイスでセルフオーダーが可能
- 各種キャッシュレス決済にも対応
- 確実に厨房へオーダーを通知し、抜け漏れを防止
導入の目的
- レジ業務の効率化
- 本部の売上・顧客データの一元管理を実現
導入の効果
- スタッフの業務負担の軽減
- ランチピーク時の人手不足解消
- 売り上げ、顧客データをリアルタイムで確認・分析し店舗運営の質が向上
導入ステップと社内体制作り
飲食店でDXを導入する際「店舗業務の最適化」「段階的なアプローチ」を両立させることが重要です。
課題の洗い出し
DXを導入する前に、まずは「ピーク時に配膳・会計を担当する人員が足りない」、「レシピのマニュアル化が進んでいない」、「店内および厨房の清掃に時間がかかる」などといった、現状の課題を洗い出しましょう。
現状の課題を明確にすることで、どの業務にDXを導入すべきかの優先順位が見えてきます。たとえば、配膳・会計の人手不足にはセルフオーダーシステムや配膳ロボットの導入、清掃業務には清掃ロボットの活用が効果的です。
スモールスタート
洗い出した課題を参考に効果が出やすい業務を絞って試験的にDXを導入しましょう。スモールスタートで進めることで大規模な初期投資を避けることができ、導入リスクを最小限に抑えることができます。
また、現場のオペレーションとの相性や導入ツールの有効性を実際に検証することで、本格導入前に潜在的な課題や改善点を把握できます。
効果検証・社内体制作り
スモールスタートで導入したDX施策の成果(回転率の向上、注文ミスの減少、人件費削減など)を可視化してスタッフや経営層に共有します。導入効果を段階的に検証・報告していくことで、スタッフの理解が得られ、他の業務や店舗に展開するための投資に納得してもらえるようになります。
このような取り組みが評価されれば現場のモチベーションが向上するだけでなく、改善提案が通りやすくなるなど、社内体制に良い影響を与えるでしょう。
全店舗展開・継続改善
スモールスタートで成功した事例を他店舗や他業務へと横展開する際には、それぞれの現場の状況や課題を事前に把握して最適なシステムを選定・導入することが重要です。単なるシステムの横流しではなく、現場ごとの特性に応じたカスタマイズが成功の鍵となります。
また、段階的に導入を進めながら、現場からの定期的なフィードバックを取り入れることで、導入後の業務効率化やトラブルの早期発見・解決を図る体制を構築することも重要です。
費用と回収シミュレーション
飲食店でDXを導入すれば人件費削減しつつ顧客満足を向上することができます。一方、スモールスタートで導入しても初期コストが高額となるため、ここではDX導入の際に使える助成金の一例やそれを使った費用回収シミュレーションについて解説します。
DXを導入する際に使える助成金
まずはDXを導入する際に使えそうな助成金について紹介します。
IT導入補助金
中小企業や小規模事業者がITツールを導入する際の費用の一部を支援する制度で、POSレジや予約管理システムなどの導入が対象となります。
導入するITツールの1/2〜2/3が補助され、申請枠によって異なりますが補助額は最大で450万円です。
小規模事業者持続化補助金
小規模事業者が販路開拓や業務効率化を図るための取り組みに対して支援を行う制度で、DX関連の取り組みも対象となります。
原則として導入するシステムの費用の2/3、通常枠の場合、最大で50万円が補助されます。
詳細な情報や申請方法については、各制度の公式サイトや自治体の窓口で確認してください。
費用回収シミュレーション(例:おそうじレンタル)
例として、リ・プロダクツ株式会社の掃除ロボットレンタルサービス「おそうじレンタル」を利用した場合の費用回収シミュレーションを示します。
- 導入ツール:業務用ロボット掃除機 Eufy X10 Pro Omni
- レンタル費用:月額13,000円(1台))
*お試し5日間を経て最低利用期間6ヶ月からのスモールスタートが可能 - 10時開店・20時閉店、200㎡程度の広さのカフェレストランを想定
- 人件費削減効果:開店前に従業員が1人でしていた床掃除をロボットに代用した結果、1ヶ月あたり 2.8万円を削減
(1人あたりの1ヶ月の作業コスト想定 約4.5万円/月(時給1,500円×1日1時間×30日)- ロボット費用 16,750円(掃除ロボットレンタル費用1.3万円+準備・後始末3,750円) )
掃除の負担を軽減できる分、他のサービスの質向上および店内を清潔に保てるため顧客満足度向上効果も期待できます。
DX推進でつまずく5つの落とし穴
飲食店がDXを導入する際には、多くのメリットがある一方で、いくつかの落とし穴(課題)が存在します。
ツールの乱立と連携不足
POSレジ、予約管理、モバイルオーダー、会計など、それぞれ別ベンダーのツールを導入するとデータの一元管理が難しくなり、連携できないため逆に手間が増えてしまうことがあります。「DX疲れ」しないためにも導入するツールについて事前にしっかり調査し、データを一元管理できる物を選ぶようにしましょう。
従業員のITリテラシー不足
新しいツールを導入しても、現場スタッフが使いこなせないと意味がありません。アルバイトや高齢のスタッフにとっては、操作が難しく現場が混乱するといったケースも少なくありません。
複雑なツールではなく直感的に操作できるものを選ぶ、スタッフへの教育やマニュアル作りを徹底するなどの対策を講じましょう。
初期コストの高さ
高性能なPOSレジや配膳ロボットなどは初期費用が数十万〜数百万円になることもあり、特に小規模店舗にはハードルが高くなってしまいます。
高価なツールでも適切に使えば経費削減効果が大きくなるので、使える助成金の調査や費用回収シミュレーションしてから導入することをお勧めいたします。
現場オペレーションとの不一致
オーダー画面が複雑すぎて注文に時間がかかる・厨房に伝達が遅れるなど、システムが現場の実態と合わないとDXを導入しても逆に業務効率が下がることがあります。最初はレンタルできるツールなどを試験導入する、簡単に操作できるものを選ぶなど、現場の実態に合うDXツールを選ぶことが肝要です。
導入後のサポート・更新不足
導入後のサポート体制が不十分、OS更新や法改正(インボイス制度など)にシステムが対応できない場合、トラブルに対応できず再導入が必要になることもあります。サポート体制の内容や対応実績、今後のアップデート方針などを十分に確認してから導入しましょう。
まとめ
DXは業務プロセスの見直しや組織全体の意識改革を伴う、経営に直結する重要な取り組みで、競合店舗に対する優位性を確保できます。
DXを導入する導入にあたり疑問や不安を感じている方は、まずは資料請求や相談窓口へぜひお問い合わせください。
リ・プロダクツは飲食店の清掃業務向けの製品やサービスを手掛けており、顧客に寄り添った柔軟な提案を強みとしています。サービスの提供はもちろん、スモールスタートで伴走しながら着実にIT活用を社内に広めていくことが可能です。